俳優に限らず声で演技をする声優にとっても、アフレコ現場でアドリブ力があることは表現力の高さという点で、ディレクターから重宝されます。

何故かというと、少し遊びを入れて演技を入れてみたりすることが、作品のクオリティーを高めることもあるからです。

例えば、ごく自然なナレーションとして耳馴染みの良いちびまる子ちゃんの「後半へ続く」という発言は、キートン山田さんによるアドリブで、スタッフが気に入ったことで定番フレーズとなったのは有名です。

また、たくさんの人が子供の頃から聞いているばいきんまんの「ハーヒフーへホー」もアドリブ力が生み出したものです。

台本はすでに用意される言葉だけじゃないよ

声優の台本に「AD」と書かれていたらそれがアドリブを入れる部分で、キャラクターの口元が画面外にあって何かを喋らせたい時やきちんとしたセリフは無いけれど音を加えたい時などにアドリブが要求されます。

メインキャラクター以外にも人物がいて話し声などでガヤガヤしているシーンがありますが、このガヤもアドリブで場面にあったセリフを入れなければなりません。

また、“テスト本番”で収録されることもありますが、映画撮影のようにテストもかねて何パターンか収録することもあります。そんなときに、「AD」のない台本通りの演技と、少し遊びを入れた演技もできると、味わいの違う収録もできますよね。

ディレクターは、よりよい方を選ぶことで作品クオリティーを高めることができるので、器用にこなせる声優がアドリブ力が高いと評価されるわけです。

アドリブ力の鍛え方

天性の才能で深く考えなくても素晴らしいアドリブを思いつく人もいますが、ほとんどは努力したり先輩の技術を参考にしたりして身につけています。

知識

アドリブ力を付けるためには本を読むのがおすすめです。キャラクターの特徴を掴んで文脈の前後で何を求められているか分かるようになります。最初は興味が持てる読みやすい本でも良いですが、評論など少し難しい本に挑戦することで能力を高めることができます。

思考

ただし漠然と本を読むだけでは読解力は付かないので、文章をたどりながら「誰がなぜ何をどうした」のかを意識すると良いです。これを続けるだけで論理的思考が養われて、前のシーンを受けて最も理にかなった一言を入れることができます。

読書することは語彙を増やすことにもつながるので、自分が伝えたいことを的確に表現するのも楽になります。短い文章を論理的に把握できるようになったら、本全体の内容を決められた文字数で要約すると読解力が付いていると実感できます。

体験

また人間観察も演技には欠かせないことで、普段から周りの人の言動を注意してみるとリアルな反応を知れます。よく声優はたくさんの経験を積んだ方が良いと言われますが、経験したことは自分の物になり視野を広げることができるためです。

自分が当事者になって体験するのが一番ですが、職を転々としたり人生を180度変えたりすることは長い時間がかかり声優人生に影響が出ます。そこで自分が体験できないことは観察して吸収していくと、たくさんのケースが集まって似たような設定のシーンをアフレコするといった幸運に巡り会えます。

例えばカップルはどんな会話をしながら食事を楽しむのか、サラリーマンが急ぎ足で営業先に向かう様子、小さな子供の振る舞いなど全てが役立ちます。

声優は自分が歳をとっていても声が若ければ何十歳も若い役をします。おとなしい性格の人が勇敢に悪と戦うこともあれば、異なる性別のキャラクターを演じることもあります。周囲に正義のヒーローがいなくても正義感の強い人がマナーが悪い人にとる言動を吸収できれば、キャラクターのイメージを壊さないアドリブを入れることが可能です。

最後に

近年はラジオ・イベントなどで声優も生コメントを求められる機会は多くなっているので、アドリブ力を鍛えておくと困らなくなります。

自宅にいる時は読書で読解力を高め、外では役になりきるための材料集めをすることがアドリブ力上達に効果的とされていますが、根気よく続けなければなりません。

今は流行っている言い回しも1年も経たないうちに廃れてしまうほど、時代は常に変化しており人々の物事の捉え方は同じではありませんが、末永く愛される刺さる言葉は、声優の遊び心から生まれているんですよね。