ナレーション収録を初めて依頼する場合、まず原稿の作成を『どのようにすればいいの?』と悩まれると思います。

生放送にせよ、完パケで流すにせよ、スタジオや人手の時間制約などがあるため、お互いにとって是非とも良い仕事となる台本・原稿作りができるように、ナレ録り用原稿を作成する際の注意点を挙げて行きたいと思います。

ここでは顔を突き合わせて作業をしないWEB上の格安ナレーションサービスを使って発注する場合を想定しています。ナレーター側から依頼者様の原稿に関し校正案を出すことはないので、以下のことに配慮しナレーション原稿を準備してみてください。

ナレ録り用の原稿をブラッシュアップさせる2つのポイント

作成するに当たって、大事にしてほしい要素は大きく分けてふたつの主軸があります。

まず「読みやすい」ということ、そして「聞きやすい」ということです。

ナレーターが「読みやすい」原稿へ

ディレクションの仕方にもよりますが(作成者がそのまま読むのであればこのあたりはセルフディレクションになりますが)、イントネーションや感情をしっかり乗せたり、淡々と読んだり、といった1ランク上のナレーションを求めるのであれば、最低限「読みやすい・読み上げやすい」というのは必要不可欠です。

あまりにもぐちゃぐちゃな字で書きなぐられたメモを読める人は限られてくるように、PCによる印字がいくらきれいとは言え、文章の打ち方やレイアウトにもある程度のルール・マナーは存在します。

例えば、段落ごとに分かれていない、句読点がなくズラズラと続くといった初歩的なミスは誰でも「読みにくいな…」と思いますよね。

まずは、文章・テキストの質よりも日本語・国語をしっかりする、という点が挙げられます。誤字脱字はもちろん、漢字の打ち間違いやふさわしい内容・分量での改行といったように、書類としての基礎を押さえましょう。

ビジネスマンとしての普段の仕事まで疑われてしまうので、ここは確実に

そこがクリアできたら、効果的な空欄(行間)の使い方、見出しや罫線をつけて区切りをつけるなど、資料として見やすいように。そして、読みにくい漢字や英語列にはカッコをつけて読みがなをふりましょう。

できれば欄外に注釈が書いてあるとかなり親切です。あと、漢字の開き(「下さい」は「ください」、「私達」は「私たち」、「極少数」は「ごく少数」など)をすることにより、読みやすくなるのは原稿というより活字仕事の基本ですね。

CMや朗読などの収録であればほとんど関係ないですが、ラジオの番組収録の場合は特にタイムを書いておく必要があります。何分から何分までの目安で読み上げるなど、スタッフの都合やプロジェクトの都合が分かるように書いておくのも、ナレーター(読み上げ役)に恥をかかせないようにするために重要です。

収録が押さないようにするのも原稿・台本作成者の努めですので、そこはきちんと押さえましょう。

台本は横書きじゃなく、縦書きが基本

ナレーションを入れるのにナレーターは、目の前のモニターと、台本とを交互に見ながら話します。

なので、目の動きがつねに上下方向に固定できる縦書きの台本が基本です。

『横書きと縦書きなんて同じじゃないの?』と思うかもしれませんが、映像を見ながらスムーズに進めるのは縦書きです。予算の関係上、自社で原稿を用意する場合は、音響の質を高める細かいポイントにもなりますので、気を配ってくださってください。

音声として第三者もわかりやすい表現へ

次に、読み手を意識した作り。動画が一緒についている場合ならいいですが、聞き手はリスニングだけで情報を拾うことになるため、難解すぎる表現や聞き取りにくい表現には注意が必要です。

例えば「製作者の意向を汲み取った」という表現も、可能であれば「デザイナーのアイデアを取り入れた」と言った方が耳に入りやすいです。もちろん、これはプロジェクトの内容によっては必要な時もあるので(ニュース番組など)、一概には言えません。

プロジェクトのキャラクターに応じた表現を意識する、ということを大事にしてください。リスナーやユーザーの目線に立って作成することが必要ということです

実は、この読み手・聞き手の両者の問題を解決し、誤字脱字をひとつでも減らせる可能性が上がる、非常に効率の良い方法があります。それは「試しに読み上げる」ということ。できればゲネプロ・ランスルーをするのが良いですが、時間がなければ主要な箇所だけでも行うと、原稿の質が段違いになります。

まず自分で読んで、そして次に人前で読んで、さらに他の方に読んでもらえれば、効果てきめんですよ。

「ここがわかりにくいな」、「ここは読みにくいから、この表現に変えた方が良いんじゃない?」など、人前で披露するだけでも、自分ひとりでは分からなかった粗がドンドン出てくるのでおすすめです。「毎回リハなんてやってたら大変だし…」という方、安心してください。

台本を徹底的に繰り返して修正した経験を5?6本分くらい積めば、自然とミスが減るようになり、自分で読み返すだけで修正ポイントが分かるようになります。スマートフォンに備わっている録音アプリで録音する、というのも非常に効果的です。

また、コツとしては、文章は長過ぎない、ということ。読み物・コラムは代名詞や「こそあど」で装飾して、1つの文章が2~3行を超えることもザラですが、読み上げる文章・聞き取る文章としてはわかりにくくなるため、適切な分量で区切るようにしましょう。

その他に気にしたいことと言えば、絵がある場合について。テロップが入れられる、絵・動画で説明がかなりできている場合は、ナレーションはほとんど要りません。わかりにくい場合だけや、どうしても詳細を入れた方がわかりやすくなる、という時だけ細かいナレーションを挟めば良いです。イメージによる理解力の補佐の文章量で十分です。

最後に

より高度な要求として、フックになるワードや手法・空間表現などがありますが、書き慣れるまではまずは基本に忠実に、読みやすい・聞きやすいを心がけてみてください。

ただ大きな仕事の場合、ナレーション原稿を書く構成作家と呼ばれるプロの専門スタッフが、企画書とヒアリングをベースに台本を作成してくれます。発注者が原稿に関して心配することはありませんよ。