誰もが緊張するイベントの司会。慣れている、という人はプロ以外では稀でしょう。急に司会進行役を振られたら慌てふためくことは必至ですが、その場合、まずは下手にうまくしゃべろうとするのではなく、大きな不安要素をはじくことから始めましょう。では、司会における大きな不安要素とは何でしょうか。

イベントを「失敗させない」ことをまずは心得ましょう

基本中の基本ですが、イベントの目的とゴールが曖昧だったら大問題です。パネラーが漫然と話すのを観客が流し聞きしているイベントになりかねません。全く盛り上がらないイベントの司会者がどれだけ冷や汗をかく思いをするかは、想像に難くはないでしょう。

主催者は誰か、イベントの開催目的、イベントを通して観客に取ってもらいたい行動(例えば、特定の商品に興味を持ってもらう等)、目的に即してパネラーに何を話してもらうか、観客はどのような期待感を持ってイベントに参加しているかなど、全体感を把握しておきましょう。

次に、会場の雰囲気を損ねるレベルの大きなミスは、徹底的に防ぐことです。基本的なことですが、パネラーの名前と読み方、所属している団体など固有の情報についてはしっかり押さえておく必要があります。こうした情報を間違えてしまうことは、パネラーの気分を損ね、場のテンションを下げてしまいます。可能であれば台本を作って事前に音読したり、言いづらそうな言葉にはハイライトを引いたりするなど、ミス防止に努めましょう。

パネラーと司会者でトークのグルーブ感を作りましょう

イベントを失敗させないための準備ができたら、次はイベントを盛り上げるための準備です。イベントを盛り上げるために必要なのは、なによりグルーブ感です。まず、鏡で自分の表情や笑顔をチェックして下さい。司会者自身がイベントを楽しんでいるという印象を観客に与えられるか否かで会場の熱は変わってきます。笑顔がぎこちない、口元だけ笑っていて目が笑っていないなどが無いでしょうか。

また、パネラーの話に対するリアクションは、通常の会話よりは大きく取ることも必要です。広い会場では、表面的な表情やちょっとした仕草などは観客には見えません。1対1の会話と違い、イベントの司会者は、相手の話に対する反応を会場全体に届ける必要が出てきます。マイクを通して観客に聞こえる声で、相槌を打ったり、分からない点は質問したり、思い切りツッコミを入れたりすることを心がけましょう。

質問力やツッコミの上手さというのは、会話を盛り上げる上で非常に重要です。司会者が分からない点は観客も分からないと思っている可能性が高いので、必ず聞きましょう。また、会話に広がりが出るような質問を事前にいくつか用意しておくと良いでしょう。あと、パネラーの失敗談や逆に少しピントのずれた自慢話など、ここはボケとして笑いを取れるな、と思ったらすかさずツッコミを入れて、流さずに観客に届けるようにしましょう。

司会者は全てのパネラーと全ての観客を意識しましょう

パネラーにも当然しゃべるのが苦手な人としゃべりたがりな人がいます。折角お越しいただいたパネラーです。司会者は必ず、全てのパネラーからトークとその魅力を引き出すようにしましょう。特定のパネラーと司会者だけが盛り上がって楽しんでいて、残りのパネラーが置いてけぼりになっているのは、観客から見ても気分のいいものではありません。余り話せていないパネラーには「○○さんはいかがですか」と会話を振るようにしましょう。

また、事前にパネラーの事をよく調べておけば、このような話題であればこの人から面白い情報が引き出せる、というようなことが自然に判断が付きます。

ただし、パネラーとのトークそれ自体を司会者本人の視点や価値観で行ってしまっては何にもなりません。イベントはパネラーと司会者の間だけでトークを楽しむものではなく、観客に対して何らかの情報を届け、何らかのアクションを取らせるためのものです。

そのため、司会者は常に、観客全体の代弁者である必要があります。イベントの目的や観客層などをしっかり意識して、パネラーの話に対して「観客が」どう思っているか、何をより深堀して聞きたいと思っているかを把握しましょう。でないと、イベントそれ自体が内輪談義に堕してしまい、会場全体を巻き込んでうねるグルーブ感は作れません。

タイムマネジメントの極意はタイムテーブルの使いこなし方にアリ

イベントには流れがあります。幾ら会場全体が特定の話題で盛り上がったとしても、いつまでもその話をしている訳には行きません。個別の話題で盛り上がって、イベントの本来の目的である大きなポイントが冒頭でお話しました、イベントの目的、ゴール、そしてそれを達成するために必要な要素を常に意識しておきましょう。

そして、ある程度のタイムテーブルは作っておき、話題ごとにかける時間をクリアにしておきましょう。そしてその際、パネラー全員でその青写真を共有しておくことが大切です。確実なタイムマネジメントを行い、イベントを無事ゴールにまで進めるには、パネラーの協力が欠かせません。

また、タイムマネジメントは台本通りに行うとは限りません。イベントの主役とゴールは観客です。タイムテーブル通りでも、会場が盛り下がっていれば、早く次の話題に移るべきでしょう。逆に、少し時間がオーバー気味かなと思っても、パネラーの言うことが聞き取りづらかったり、そのイベントにとって重要なポイントを言ったのであれば、司会者は必ず聞き返したり深堀して質問するなどして、観客にそのポイントを印象付けるようにしましょう。タイムテーブルは必要ですが、イベントの目的と観客はもっと大切です。