声を形作る3要素(音量・音高・音色)のうち、音色を決める倍音について紹介します。人の声質を決定づける「倍音」には、大きく分けると整数次倍音非整数次倍音の2種類があり、場面によって使い分けることが重要です。

その人の声質を決定づける「倍音」

当然のことですが、人の声にはそれぞれ少しずつ違いがあります。親子や兄弟で声が似ていたり、物真似芸人さんがとても上手に声色を真似たりすることもありますが、それもあくまで似ているだけのこと。同じ容姿の人がひとりとして存在しないように、すっかり同じ声の人も他には存在しないのです。

人の声質を決める大きな要素のひとつが「倍音(ばいおん)」です。倍音というのは、他の音に共鳴して鳴ったり、付随して発生する音のことを指します。例えば、同じ楽譜を演奏しても楽器によって音色が違うのは、それぞれの楽器で発生する倍音に違いがあるからです。

この倍音は、楽器や自然界の音だけではなく人の声にもあります。楽器と同じく、同じ歌でも歌う人によって違った声色や印象になりますよね。それは倍音によってそれぞれに独自の声質が決まっているからなんです。

  • 音に含まれる倍音:多い⇒明るい、少ない⇒暗い
  • 倍音の周波数:高い⇒どっしりとした太い音、低い⇒クッキリした音

※注記:倍音の種類と音量によって音色は大きく変わります。

倍音には整数次倍音と非整数次倍音の二種類がある!

人の声質をはじめとした音の性質や印象を決める倍音ですが、2種類のタイプに分けることができます。

それが「整数次倍音(せいすうじばいおん)」と「非整数次倍音(ひ せいすうじばいおん)」です。

整数次倍音と非整数次倍音の違い

名前の通り、規則的な波長を持っているのが整数次倍音、不規則な波長を持っているのが非整数次倍音です。聞いたときの印象も、整数次倍音の方がクリアで重厚感がある音、非整数次倍音はより自然的で聞いている人に安心感を与える音というように大きく異なっています。

ですから、例えば整数次倍音の声を持っている人が話すと、どこかカリスマ性を感じるような説得力の強い声に感じられます。ニュースを読む際のアナウンサーやお経を読むお坊さんのように、真面目で堅実、そして聞き取りやすい……そんな印象を聞く人に与える声質となります。

逆に、非整数次倍音で話す人はどこか親しみやすく、愛嬌を感じさせる声をしています。ニュースを読むアナウンサーや読経するお坊さんの声色とは違い、感情や情緒が声を聴くだけで伝わるような、そんな印象を与える声質です。また聞く人の注意を引き付ける効果も強く、周りの注目を集めやすい声であるのも特徴のひとつです。

同じ言葉を話していても、非整数次倍音か整数次倍音かで与える印象は大違い

これまでにも、「真面目なナレーションをするときに相応しい声色」「明るく楽しい文章を読む場面で使う声色」というように、自分なりにシーンに合わせて声のトーンや話し方を工夫してきた方も多いでしょう。

実際に、全く同じ内容の話をしていても、声色やトーンが違うだけで聞く人に与える印象は大きく変わります。ここにも整数次倍音非整数次倍音が深く関わっているのです。

例えば少し毒舌を交えたトークをしているときには、整数次倍音で話すと必要以上に感じが悪くなってしまいがちです。説得力がありよく通る声なので、毒舌というよりただ批判をしているように聞こえてしまうのです。

全く同じ内容でも、非整数次倍音で話すと、少し辛口だけれど愛嬌があって面白いトークだと感じる人がぐんと増えます。相手に安心感・親近感を与える声色で話しているので、感じが悪い、意地悪だ、というイメージが起こりにくくなるために、聞いていて不快に感じなくなるんですね。

逆に、政治や重大な事件などに関するニュースを非整数次倍音で話してしまうとどこか軽々しく聞こえ、説得力や深刻さに欠けたナレーションとなってしまいます。こういった真面目なトピックについて話すときには、整数次倍音のよく通り説得力を感じやすい声色の方が向いているのです。

場面によって使い分けることが重要!

人によって声質・声色がそれぞれ異なるのと同様に、基本の声が整数次倍音非整数次倍音かも人それぞれに違います。元々の声質的にニュース等の真面目なナレーションが向いているという人もいれば、逆にバラエティ番組の司会であったり、スポーツニュースのようなエンタメ性の高いニュースが向いている人もいるのです。

もちろん、ちゃんと意識して練習すれば元々の声質とは違う声も出せるようになります。元々の声が整数次倍音だからといって、非整数次倍音が出せないわけではありません。先ほども触れましたが、整数次倍音非整数次倍音の違いを意識していなくても自分なりに声色を工夫してきたという人も多いでしょう。そういった人は、無意識のうちに整数次倍音非整数次倍音を使い分けている可能性が高いです。

ときにはギャップを狙うとより効果的

話す内容やシーンに合わせて整数次倍音非整数次倍音を使い分けるのも大事ですが、ときにはあえて場面にそぐわない声色で話すのも効果的なケースがあります。

例えば、整数次倍音のカリスマ性を感じられる声色で軽妙なトークができれば、重々しく真面目な声と楽しい会話の内容のギャップが評価されることがあります。

それとは逆に、非整数次倍音の明るく親しみやすい声で真面目な話をするのもいいでしょう。声色から想起させられるイメージと話している内容のインテリジェンスのギャップが大きいので、聞いている人に与える印象もより強烈になるはずです。注目を集める声でもあるので、より多くの人に話を聞いてもらえることもあるでしょう。

 

場面によって声を使い分けられるようになれば、それぞれのシーンで最高のパフォーマンスを発揮することができ、自分の大きな強みにもなります。

まずは自分の声質が整数次倍音なのか非整数次倍音なのかを見極めることからはじめましょう!