ガ行の濁音のみ、一般的に使われている濁音(だくおん)以外に、『鼻濁音(びだくおん)』という発音があります。

鼻濁音とは、「が・ぎ・ぐ・げ・ご」の子音を発音する際に、鼻に音を抜く濁音のことです。

鼻濁音を使えるとガ行の音韻がまろやかになり、上品な日本語を話している印象を与えますから、アナウンサー・ナレーター・声優など言葉を伝える職業の方には、必須の発音です。

鼻濁音について

鼻濁音は日本語の発音の美しさの一つとされていますが、江戸時代を通じて次第に使われなくなってきた発音です。

ガ行のみの発音なので、「ガ行鼻濁音(がぎょうびだくおん)」や「ガ行鼻音(がぎょうびおん)」とも呼ばれています。

「鏡」の属性別分析(全体・男女別)

「鏡」の属性別分析(年代別)

音感の相違は、国語表記で区別されていない

国語表記の基準において、鼻濁音の表記は濁音と区別をしていないので、そもそも義務教育の授業で習いません。

『獄中記』、『浮世風呂』などの昔の書物では、鼻濁音は「゛」の代わりに半濁音に付される丸状の記号のような「゜」や汗マークのような白抜きの「`」を用いて音感の区別していたようで、「か゚」や「か」と明記されています(23)。

※注記です。汗マークのような白抜きの「`」は変換できないので、正しくは以下の図を見てください。

鼻濁音の表記

現代では、音声学・アクセント辞典などの発声に関する専門書籍で詳しく紹介されているだけなので、知識として一般的は知られていません。

地域差がある

鼻濁音は地域差も大きく、現在も多く使われているのは、東北地方と関東北部、中部地方の長野・岐阜・愛知・山梨・富山・石川の都市部を除いた地域だけです。

「鏡」の属性別分析(地域別)

以上の調査データ(1)をみてわかるように、鼻濁音そのものが廃れて日常会話でも使われなくなっていますから、専門的な勉強をしないかぎり、使いこなしにくい発音となっています。

濁音と鼻濁音の使い分けルール

台本や原稿では、パッと見でわかるような表記方法でわけることはしていませんから、濁音と鼻濁音の使い分けルールを押さえておく必要があります。

鼻濁音にする一定の規則を紹介します。

  1. 語頭以外の「ガ」行の音、助詞・接続詞の「が」などは、鼻濁音で発音する。
  2. 語中にあっても、はっきり発音しないと意味が通り難くなる場合は、鼻濁音にしない。
  3. 数字の5は、ちゃん聞こえないと困るので、鼻濁音にしない。

面倒な例外

カタカナの「ガ」行、擬音・擬態語のガラガラ、ギーギーなどは濁音になります。

中学校(ちゅうか゚っこう)は鼻濁音ですが、高等学校(こうとうがっこう)、教養学部(きょうようがくぶ)などの複合語は濁音になります。

数字の15、25なども濁音ですが、純粋に数詞として使われる以外の十五夜(じゅうこ゚や)、七五三(しちこ゚さん)などは鼻濁音になります。

以上のように、例外が多いので、結局のところはひとつづつ調べて身につける必要があります。この面倒臭さが、次第に日本語から鼻濁音が廃れてきた要因の一つともいわれている程です。。。

鼻濁音のコツをつかむ練習方法

濁音「が」と鼻濁音「か゚」 音声記号の違い

鼻に抜けて発音されるガ行濁音が、鼻濁音です。

はっきりと「が」と言ってしまうのではなく、少し鼻にかけて「が」の前に小さな「ん」が付くように音を出してみましょう。

鼻濁音は「か゚」だけでなく「ガ」行の「か゚」「き゚」「く゚」「け゚」「こ゚」と5つありますので、それぞれ「んが」「んご」「んぎ」「んぐ」「んご」と練習しましょう。

鼻濁音の子音は「n」と「g」の中間音なので、鼻にかかりすぎないようにするため、練習するときには、まず「んーーーー」とハミングしながら、徐々に口を開けて「か゚」にしていきましょう。

この時、境目が分からないように「か゚」にしていくのが大切です。

次に徐々に「んーー」と伸ばしている時間を短くして「か゚」にしましょう。

最後は「んが」を一つとして鼻に息が抜けるように発音するようにします。

・参考文献
.尾崎喜光(2015)「全国多人数調査から見るガ行鼻音の現状と動態」『ノートルダム清心女子大学紀要 日本語・日本文学編』第39巻第1号

.文字・音韻の研究~幕末の『獄中記』にみられるガ行鼻濁音表記とその系譜
.鼻学 鼻の文化考 ブロンズ社
4.研究社 日本語口語表現辞典
5.NHK 日本語発音アクセント新辞典