鼻濁音(びだくおん)とは、鼻に抜けて発音されるガ行濁音のことです。

ガ行のみ、『濁音(だくおん)』と『鼻濁音』の2種類あることになりますが、無声化と同じように発音の違いは意味の区別に関係しませんから、義務教育期間の授業で習うことはありません。

ただ、アナウンサー・ナレーター・声優・歌手など言葉を伝える職業、日本語教育能力検定への合格を目指している方には、必須の発音です。

鼻濁音が難しい理由とは?

鼻濁音は日本語の発音の美しさの一つとされていますが、江戸時代を通じて次第に使われなくなってきた発音です。

鼻濁音を使う地域と使わない地域がある

鼻濁音が現在も残っているのは、東北地方と関東北部、中部地方の長野・岐阜・愛知・山梨・富山・石川の都市部を除いた地域だけです。

鼻濁音そのものが廃れて日常会話では使われなくなっていますから、知識があっても聞き分けにくい、使いこなせない発音となっています。

鼻濁音の表記が特殊

『獄中記』、『浮世風呂』などの昔の書物では、鼻濁音は「゛」の代わりに半濁音に付される丸状の記号のような「゜」や汗マークのような白抜きの「`」を用いて区別していたようで、「か゚」や「か」と明記されています。

※注記です。汗マークのような白抜きの「`」は変換できないので、正しくは以下の図を見てください。

現代では、音声学・アクセント辞典などの発声に関する専門書籍で詳しく紹介されているだけで、仕事の中に見かけることのない表記方法です。

※注記です。現在、文字を使って鼻濁音の表記を行う場合、「か゚き゚く゚け゚こ゚」と書くのが一般的です。

鼻濁音のルール

台本や原稿では、パッと見でわかるような表記方法でわけることはしていませんから、鼻濁音の大原則ルールを押さえておく必要があります。

  • 語頭以外の「ガ」行の音、助詞・接続詞の「が」などは、鼻濁音で発音する。

面倒な例外

カタカナの「ガ」行、擬音・擬態語のガラガラ、ギーギーなど、数字の5などは、鼻濁音でなく濁音になりますので、注意しましょう。

ただし、純粋に数詞として使われる以外の十五夜(じゅうこ゚や)、七五三(しちこ゚さん)などは鼻濁音になります。

高等学校(こうとうがっこう)、教養学部(きょうようがくぶ)などの複合語は濁音、中学校(ちゅうか゚っこう)は鼻濁音。

お元気のように敬語の接頭辞の後などは、鼻濁音になりやすくなるなど、例外が多いので、結局のところはひとつづつ調べて身につける必要があります。この面倒臭さが、次第に日本語から鼻濁音が廃れてきた要因の一つともいわれている程です。。。

鼻濁音を練習するときのコツ

鼻に抜けて発音されるガ行濁音が、鼻濁音です。はっきりと「が」と言ってしまうのではなく、少し鼻にかけて「が」の前に小さな「ん」が付くように音を出してみましょう。

鼻濁音は「か゚」だけでなく「ガ」行の「か゚」「き゚」「く゚」「け゚」「こ゚」と5つありますので、それぞれ「んが」「んご」「んぎ」「んぐ」「んご」と練習しましょう。

鼻濁音の子音は「n」と「g」の中間音なので、鼻にかかりすぎないようにするため、練習するときには、まず「んーーーー」とハミングしながら、徐々に口を開けて「か゚」にしていきましょう。

この時、境目が分からないように「か゚」にしていくのが大切です。

次に徐々に「んーー」と伸ばしている時間を短くして「か゚」にしましょう。

最後は「んが」を一つとして鼻に息が抜けるように発音するようにします。

鼻濁音は外国語習得にも役立つ

鼻にかける発音を良く使えると、鼻にかける母音「鼻母音」を比較的簡単にマスターできるといわれてます。

【参考文献】

・NHK 日本語発音アクセント新辞典
・研究社 日本語口語表現辞典・
・文字・音韻の研究~幕末の『獄中記』にみられるガ行鼻濁音表記とその系譜
・鼻学 鼻の文化考 ブロンズ社