外郎売りの口上には、どんな効果がある?

外郎売りは、享保3年に初演された歌舞伎十八番の中の演目です。現代では、その外郎売りの口上の一部の長ゼリフを指すことが一般的になりました。「拙者親方と申すは、お立ち合いの中にご存知のお方もござりましょうが、お江戸を発ってニ十里上方…」といった内容です。

発声教材として読み上げる文章はたくさんありますが、その中でも効果的だといわれるのが、この「外郎売り(ういろううり)」です。

なぜ外郎売りの口上が声優としての成長に結びつくのでしょうか。そこで、今回は外郎売りについてご紹介します。

外郎売りを練習すると身につくものとは?

この外郎売りは、今活躍している声優だけでなく、アナウンサーや俳優・女優なども必ず勉強している方法のようです。それだけ多くの人に支持されている練習方法ですから、これから声優になりたいと思っているのなら必ず練習しておきましょう。

外郎売りをたくさん練習すると具体的にどんな力が身につくのでしょう。

外郎売りを積極的に練習して得られるものってなんだろう?と考える人もいるかもしれません。しかし、この外郎売りは、発声練習から演技力、滑舌までなんでも身につくといわれています。

高い演技力が身につけられる

というのも、外郎売りのこのセリフは薬を売っている商人のセリフです。あの甘くておいしいお菓子のことではありません。現代風にいえばセールスマンのような立ち位置になります。

そして、商品を売るためにはただ淡々と商品の説明をしているだけではいけません。うちの商品はどれだけ優れているのか、他社とはどのように差別化しているのかなどを、ときには熱く語らなければお客さんも商品を買いたいと思わないでしょう。

つまり、外郎売りを読むときは当時の薬のセールスマンになりきる必要があります。もちろん、はじめは文章を読む事に精いっぱいになってしまい、演技するのは二の次になってしまうでしょう。最初はそれでも構いませんから毎日続けて練習してみましょう。

滑舌を鍛えられる

外郎売りのセリフには、一部早口言葉のようなセリフも含まれています。

早口言葉を正確にはっきりと話すためには、ある程度滑舌がよくないといけません。そのため、外郎売りを練習すると、滑舌も鍛えることができます。

「役をもらったけど、滑舌が悪くて何を言っているのかはっきりわからない」となってしまうと、プロとしての面目が立ちません。そうならないためにも、普段から滑舌の練習はしっかり行っておきましょう。

外郎売りを練習する上でのコツとは?

外郎売りを上手に演じるためにはどんなことに気を配るべきでしょうか。

どんな意味をもつ内容なのか確認しよう

外郎売りを練習する上でまずやらなければいけないことが、意味を理解するということです。当たり前じゃん!と思うかもしれませんが、現代の書き方ではないため、セリフだけ見てもどんな内容なのかピンとこないという人もいるかもしれません。

そんな人は、「外郎売り 意味」とネットで検索してみましょう。外郎売りを現代語訳したサイトがたくさんでてきます。大体どんな内容が書かれているのか、情景を理解できるはず。完全に理解してから本格的な練習に取り組んでみましょう。

現代風に一言で例えるなら、『スーパーなどで出張実演販売している店員さん』をイメージするといいです。

はっきり・丁寧・正しい発音を意識して練習しよう

外郎売りは、とにかく言いにくい行の連続なので、舌の動きなど発声練習に必要な要素が備わっている演目です。感情を込めずに、滑舌のみの練習でも読んでいくにしたがって、どこに抑揚をつけて読むべきなのか、どこを早口でまくし立てるべきなのかわかってくるはずです。

ただ、間違えた発音で練習してしまうと変な癖がついてしまう可能性もあります。焦らず正しい発音でゆっくりと練習してから、徐々に読み上げる速度をあげていく方が良いでしょう。

「声の仕事をするのなら外郎売りくらいはできるべき。」と考えている業界人がいるのは事実です。完璧にマスターするにはかなり時間がかかりますし、コツもいりますが、完璧に演じられるようになる頃には、演技力も滑舌も格段に上達しているでしょう。

外郎売り【本文ふりがな(ルビ)付き】

不自然な形で改行しているのは、そこで息継ぎをするためです。この改行に沿って必ず息継ぎしなくてはいけないっということではありませんが、切る所の参考にしてください。

外郎売(1)にふりがな(ルビ)を記載しましたが、漢字の読み方やアクセントは何種類かありますから修正して使ってください。

HP上では横書きのみになってしまうので、縦書き版はこちらダウンロードしてください。

【外郎売】縦書き・本文ふりがな(ルビ)付

第一節


拙者親方と申すは、 お立会の中うちに、

せっしゃおやかたともうすは、 おたちあいのうちに、


御存じのお方もござりましょうが、

ごぞんじのかたも ござりましょうが、


お江戸を発たって二十里上方、

おえどをたって にじゅうりかみがた、


相州小田原一色町をお過ぎなされて、

そうしゅうおだわら いっしきまちを おすぎなされて、


青物町を登りへおいでなさるれば、

あおものちょうを のぼりへ おいでなさるれば、


欄干橋虎屋藤衛門、

らんかんばし とらやとうえもん


只今は剃髪致して、円斉と名のりまする。

ただいまは ていはついたして、えんさいとなのりまする。


元朝より、大晦日まで、お手に入れまする此の薬は、

がんちょうより、おおつごもりまで、おてにいれまする このくすりは


昔ちんの国の唐人、外郎という人、わが朝ちょうへ来たり、

むかし ちんのくにのとうじん、ういろうというひと、わがちょうへきたり


帝へ参内の折りから、

みかどへ さんだいのおりから、


この薬を深く籠こめ置き、

このくすりを ふかくこめおき、


用もちゆる時は一粒ずつ、

もちゆるときは いちりゅうずつ、


冠のすき間より取り出いだす。

かんむりの すきまより とりいだす。


よってその名を帝より、透頂香と賜わる。

よってそのなをみかどより、とうちんこうとたまわる。


即文字には「頂き、透く、香い」と書いて「透頂香」と申す。

すなわちもんじには、いただき、すく、においとかいて「とうちんこう」ともうす。


只今はこの薬、殊の外ほか、世上に弘まり、

ただいまはこのくすり、ことのほか せじょうにひろまり、


方々に偽看板を出いだし、

ほうぼうに にせかんばんを いだし


イヤ、小田原の、灰俵の、さん俵の、炭俵のと、いろいろに申せども、

いや、おだわらの、はいだわらの、さんだわらの、すみだわらのと、いろいろもうせども


平仮名をもって「ういろう」と記せしは、親方円斉ばかり。

ひらがなをもって「ういろう」としるせしは、おやかた えんさいばかり。


もしやお立会いの中うちに熱海か塔の沢へ、湯治にお出なさるるか、

もしや おたちあいのうちに、あたみかとうのさわへ、とうじにおいでなさるるか、


または伊勢御参宮の折からは、

または いせごさんぐうの おりからは、


必ず門違かどちがいなされまするな。

かならず かどちがい なされまするな。


お上ならば右の方、お下りなれば左側、

おのぼりならば みぎのかた、おくだりなれば ひだりがわ


八方が八つ棟、表が三つ棟玉堂造り。

はっぽうが やつむね、おもてが みつむね ぎょうくどうづくり。


破風には菊に桐のとうの御紋を御赦免あって、

はふには きくにきりのとうの ごもんごしゃめんあって


系図正しき薬でござる。

けいずただしき くすりでござる。

第二節


イヤ最前より家名の自慢ばかり申しても、

いや さいぜんより かめいの じまんばかり もうしても、


ご存知ない方には、正身の胡椒の丸呑み、

ごぞんじないかたには、しょうしんの こしょうのまるのみ、


白河夜船、さらば一粒食べかけてその気味合いをお目にかけましょう。


しらかわよふね、さらば いちりゅう たべかけて そのきみあいを おめにかけましょう。



先ずこの薬をかように一粒舌の上にのせまして、

まず このくすりを かように ひとつぶ したのうえに のせまして、


腹内へ納めまするとイヤどうも言えぬは、

ふくないへ おさめますると いや どうもいえぬは、


胃・心・肺・肝がすこやかになりて

い・しん・はい・かんが すこやかになりて


薫風候より来たり、口中微涼を生ずるが如し。

くんぷう のんどより きたり、こうちゅう びりょうをしょうずるがごとし


魚鳥・茸・麺類の食い合わせ、その外、万病速効ある事神の如し。

ぎょ ちょう・きのこ・めんるいの くいあわせ、そのほか、まんびょう そっこうあること かみのごとし。


さて、この薬、第一の奇妙には、

さて、このくすり、だいいちのきみょうには、


舌のまわることが、銭独楽がはだしで逃げる。

したのまわることが、ぜんごまが はだしで にげる。


ひょっと舌がまわり出すと、矢も楯もたまらぬじゃ。


ひょっと したが まわりだすと、やもたても たまらぬじゃ。


第三節


そりゃそりゃ、そらそりゃ、まわってきたわ、まわってくるわ。

そりゃそりゃ、そらそりゃ、まわってきたわ、まわってくるは。


アワヤ候、サタラナ舌に、カ牙サ歯音、

あわやのど、さたらなぜつに、かげさしおん、


ハマの二つは唇の軽重、開合さわやかに、

はまの ふたつは しんの けいちょう、かいごう さわやかに、


あかさたなはまやらわ、おこそとのほもよろお。

あかさたな はまやらわ、おこそとの ほもよろお。


一つへぎへぎに へぎほし はじかみ、盆豆 盆米 盆ごぼう、

ひとつ へぎへぎに へぎほし はじかみ、ぼんまめ ぼんごめ ぼんごぼう


摘み蓼 つみ豆 つみ山椒、書写山の社僧正、

つみだて つみまめ つみざんしょ、しょしゃざんの しゃそうじょう


粉米の生噛み 粉米の生噛み こん小米のこ生噛み、

こごめの なかまがみ こごめのなまがみ こんこごめの こなまがみ、


繻子・緋繻子・繻子・繻珍、

しゅす・ひじゅす・しゅす・しゅちん、


親も嘉兵衛 子も嘉兵衛、親子嘉兵衛、子子嘉兵衛 子子嘉兵衛、親子嘉兵衛、

おやもかへい こもかへい、おやかへい こかへい こかへい おやかへい、


古栗の木の古切口、雨合羽か番合羽か、

ふるくりのきの ふるきりくち、あまがっぱか ばんがっぱか、


貴様の脚絆も皮脚絆、我等が脚絆も皮脚絆、

きさまの きゃはんも かわきゃはん、われらが きゃはんも かわきゃはん、


尻革袴のしっ綻びを、三針針長にちょと縫うて、

しっかわばかまの しっぽころびを、みはり はりながに ちょと ぬうて、


縫うてちょとぶん出せ、

ぬうて ちょと ぶんだせ


河原撫子、野石竹、野良如来、野良如来、三野良如来に、六野良如来。

かわらなでしこ のぜきちく、のらにょらい のらにょらい みのらにょらいに むのらにょらい、


一寸先の御小仏に御蹴躓きゃるな、細溝にどじょにょろり。

いっすんさきの おこぼとけに おけつまずきゃるな、ほそどぶに どじょ にょろり。


京の生鱈 奈良生学鰹、 ちょと四五貫目、

きょうの なまだら なら なま まながつお、ちょと しごかんめ、


お茶立ちょ茶立ちょちゃっと立ちょ茶立ちょ、

おちゃたちょ ちゃたちょ ちゃっと たちょ ちゃたちょ、


青竹茶筅でお茶ちゃと立ちょ。

あおたけ ちゃせんで おちゃ ちゃと たちょ。

第四節


来るは来るは何が来る、高野の山の おこけら小僧、

くるは くるは なにがくる、こうやのやまの おこけらこぞう、


狸百匹 箸百膳 天目百杯 棒八百本。

たぬき ひゃっぴき はし ひゃくぜん てんもく ひゃっぱい ぼうはっぴゃっぽん


武具・馬具・武具・馬具・三武具馬具、合わせて武具・馬具・六武具馬具、

ぶぐ・ばぐ・ぶぐ・ばぐ・みぶぐばぐ、あわせて ぶぐ・ばぐ・むぶぐ ばぐ、


菊、栗、菊栗、三菊栗、合わせて菊栗、六菊栗。

きく・くり・きく・くり・みきく くり、あわせて きく・くり・むきく くり。


麦、塵、麦塵、三麦塵、合わせて麦塵、六麦塵。

むぎ ごみ むぎごみ みむぎごみ あわせて むぎ ごみ むむぎごみ。


あの長押の長薙刀は、誰が長薙刀ぞ。

あの なげしの ながなぎなたは、たがながなぎなたぞ。


向こうの胡麻殻は 荏の胡麻殻か、真胡麻殻か、

むこうの ごまがらは えの ごまがらか、まごまがらか、


あれこそ本の真胡麻殻。

あれこそ ほんの まごまがら。


がらぴぃがらぴぃ風車。起きゃがれ小法師、起きゃがれ小法師、

がらぴい がらぴい かざぐるま、おきゃがれ こぼし おきゃがれ こぼうし、


昨夜も溢してまた溢した。

ゆんべも こぼして また こぼした。


たぁぷぽぽ、たぁぷぽぽ、ちりからちりから、つったっぽ、たっぽたっぽ一干蛸。

たあぷぽぽ、たあぷぽぽ、ちりから、ちりから、つったっぽ、たっぽ たっぽ いっちょうだこ。


落ちたら煮て食お、

おちたら にてくお


煮ても焼いても食わぬ物は、五徳鉄弓・かな熊童子に、

にても やいても くわぬものは、ごとくてっきゅう・かなぐまどうじに、


石熊・石持ち・虎熊・虎きす、

いしくま・いしもち・とらくま・とらきす、


中にも 東寺の羅生門には 茨木童子がうで栗五合 つかんでお蒸しゃる。

なかにも とうじの らしょうもんには いばらきどうじが うでくり ごごう つかんで おむしゃる。


彼の頼光の膝元去らず。

かのらいこうの ひざもと さらず。

第五節


鮒・金柑・椎茸、さだめて後段な、

ふな・きんかん・しいたけ、さだめて ごだんな、


蕎麦切り・素麺、饂飩か愚鈍な小新発知。

そばきり、そうめん、うどんか、ぐどんな こしんぼち。


小棚の小下の小桶に小味噌が小有るぞ、小杓子小持って小掬って小寄こせ。

こだなの、こしたの、こおけに、こみそが、こあるぞ、こしゃくし、こもって、こすくって、こよこせ。


おっと合点だ、心得田圃の川崎・神奈川・程ヶ谷・戸塚は走って行けば、

おっと がってんだ、こころえ たんぼの かわさき、かながわ、ほどがや、とつかは、はしっていけば、


灸を擦り剥く三里ばかりか、藤沢、平塚、大礒がしや、

やいとをすりむく、さんりばかりか、ふじさわ、ひらつか、おおいそがしや、


小磯の宿を七つ起きして、早天早々、相州小田原、透頂香。

こいその やどを ななつ おきして、そうてん そうそう そうしゅう おだわら とうちんこう、


隠れ御座らぬ貴賎群衆の、花の御江戸の花ういろう。

かくれござらぬ きせん ぐんじゅの、はなの おえどの はな ういろう、


アレあの花を見て、御心を御和らぎやと言う、

あれ あのはなをみて おこころを、おやわらぎゃっという、


産子・這子に至るまで、此の外郎の御評判、御存じ無いとは申されまいまいつぶり、

うぶこ、はうこに いたるまで、この ういろうの ごひょうばん、 ごぞんじないとは もうされまいまいつぶり、


角出せ棒出せぼうぼう眉に、

つのだせ ぼうだせ ぼうぼうまゆに、


臼杵擂鉢ばちばち桑原桑原桑原と、

うす、きね・すりばち、ばちばち ぐわら ぐわらと、


羽目を外して今日御出での何茂様に、上げねばならぬ、売らねばならぬと、

はめを はずして こんにち おいでの いずれもさまに、あげねばならぬ うらねばならぬと、


息せい引っ張り、東方世界の薬の元締、薬師如来も照覧あれと、

いきせい ひっぱり、とうほう せかいの くすりの もとじめ、やくしにょらいも しょうらんあれと、


ホホ敬って外郎はいらっしゃりませぬか。

ほほ うやまって ういろうは いらっしゃいませぬか。


【音声】外郎売りの口上

まとめ

外郎売りはマスターするのは難しい練習方法です。しかし、知名度もあり今活躍している人の中には丸暗記している人もいるほどメジャーな練習方法であることは事実です。

一度読んだだけでは内容を理解するのも話すのも難しいですが、習得できる頃には技術も上がっているはずです。プロを目指すのならぜひ頑張ってみてください。

・参考文献
.香具師口上集